米澤穂信「ボトルネック」
亡くなった恋人を追悼するために東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅に戻ったばくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もはやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔
「もしもあの時このように行動していれば…」そう思った経験が無い人はまずいないだろう。その答え合わせを強制的に”ぼく”は体験させられるといったお話。
読んでいた最初は彼が受け身な人間かつどうしようもなかったと諦めがちな人物像であったため、「後悔しないように今を全力で生きよう!!」といった教訓めいた終わり方をするものだと思っていました。
しかし、読んでいくと彼自身が正しかった、最善を尽くしたと思っていたことにもメスが入れられていくことになります。始めに姉と対面したときに何気なく口にされた「間違い探し」という言葉が次第に重みを増していく。彼が生きた世界における「間違い」とはいったい何であったのか。
自分が同じような体験をしてしまったらやはり彼と同じ結論、同じ末路をたどってしまうとおもってしまうんですよね。自分が後悔していること、あきらめたこと、やり切ったと思っていたことそれらに対して模範解答を用意されることの怖さというものを実感させられます。
読後の寂寥感はひとしおであり、決して爽快感のある読了感ではないけれども、それでも何度でも手に取って読みたくなるお気に入りの一冊です。
願わくは今後の自身の人生において答え合わせの機会がありませんように。